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Architecture

.NET Modernization for Beginners とは — Copilot でレガシー .NET を .NET 10 へ引き上げる無料コース

公開: 更新: 約7分で読めます

Microsoft は 2026 年 7 月 16 日、.NET Modernization for Beginners という無償の学習コースを公開しました。レガシーな .NET Framework アプリケーションを .NET 10 へ引き上げる過程を、GitHub Copilot のモダナイゼーション機能を使いながら手を動かして学ぶ構成になっています。リポジトリは MIT ライセンスで公開されており、誰でもクローンしてそのまま始められます。

レガシー資産の移行は「やるべきだとわかっているが、どこから手をつけるか決められない」状態で止まりがちです。このコースが埋めようとしているのは、まさにその最初の一歩の部分です。本記事では、公式発表とリポジトリ、および GitHub Copilot モダナイゼーションの公式ドキュメントをもとに、コースの構成と実務への接続の仕方を整理します。

このコースが埋めようとしている空白

.NET Framework 4.x や .NET Core 3.1、.NET 5〜7 で動くアプリケーションを抱えている組織は少なくありません。サポート期限やセキュリティ更新の都合で移行の必要性は認識されていても、実際の着手は先送りされやすいものです。理由は技術的な難しさだけではなく、「対象の全体像が見えない」「工数が読めない」「どの順番で手をつければ安全か判断できない」という、計画段階の不確実性にあります。

コースはこの不確実性を評価・計画・実行という 3 段階のモデルに落とし込み、各段階で何を成果物として残すかを示します。移行作業そのもののテクニックより、意思決定の順序を身につけさせる設計になっている点が特徴です。移行の判断材料をどう集め、どう文書化し、どう合意を取るかという流れは、規模の大きいシステムほど効いてきます。

評価フェーズで生成される分析ドキュメントの目次。サマリーの下に主要な指標、プロジェクトとパッケージと API の互換性が並び、続いて NuGet パッケージの集計、主な API 移行課題、プロジェクトの関係グラフが示されている
評価フェーズで生成される、プロジェクトと依存関係の分析ドキュメントの構成(コースの出力内容をもとに作成)

評価から計画、実行、そしてクラウドまでの章構成

コースは 00 から 04 までの章に分かれ、順番に進める前提で書かれています。各章には手順と期待される出力、つまずいたときの対処が添えられており、章を飛ばさずに進めることが推奨されています。

第 0 章は導入で、評価から計画、実行へ至る全体モデルを把握し、最初の評価を実際に走らせます。第 1 章の評価では、教材用のレガシーアプリを対象に互換性を診断し、移行を妨げる要素を洗い出します。第 2 章の計画は、評価で得られた事実を戦略的な判断へ変換する工程です。どのターゲットフレームワークを選ぶか、どの順序でタスクを並べるかをここで決めます。

第 3 章がアップグレードの実行で、.NET 10 への移行と Entity Framework Core への対応を進めます。第 4 章では Azure App Service へのデプロイまで踏み込み、移行後の運用に接続します。移行して終わりではなく、動かし続けるところまでを 1 本の線としてつないでいる構成です。

教材として使われるのは BookCatalog という ASP.NET MVC 5 のサンプルアプリケーションです。.NET Framework 4.8 を土台にしており、リポジトリの shared-legacy-app/ に置かれています。第 1 章から第 4 章まで一貫して同じアプリを扱うため、章をまたいだ変化を追いやすくなっています。

教材で使われる BookCatalog アプリケーションの一覧画面。書籍の一覧と編集操作が並び、フッターに ASP.NET MVC 5 と Entity Framework 6、.NET Framework 4.8 と表示されている
全章を通して扱う教材アプリ BookCatalog の画面(出典: microsoft/dotnet-modernization-for-beginners)

GitHub Copilot モダナイゼーションが実際に担う範囲

コースの中心にあるのが GitHub Copilot modernization です。これは Java・.NET・C++ を対象に、解析からアップグレード、Azure への移行までを一貫して扱うエージェント型の仕組みで、IDE 上での体験と、Modernize CLI を通じたモダナイゼーションエージェントという 2 つの層で提供されています。IDE 側の言語・フレームワーク・ツールセットのアップグレードと、.NET / Java の移行シナリオは一般提供に達しており、複数アプリを横断して評価と計画を進める CLI 側はパブリックプレビューの段階です。

エージェントは対象コードベースを解析し、依存関係や古いライブラリ、移行時に問題となりうる箇所を洗い出します。そのうえで assessment.md、plan.md、tasks.md といった文書を生成し、評価結果と計画、タスクの進捗を追跡できる形にします。ここで重要なのは、これらが人間がレビューし編集できる成果物として出てくる点です。ブラックボックスの自動変換ではなく、判断の根拠が文書として残ります。

移行計画のサマリー。前提条件の確認、SDK スタイルへの変換、ASP.NET Core への移行、EF Core への移行、最終検証という 5 つのタスクが順序付きで並び、それぞれの実施内容が示されている
計画フェーズで生成される移行計画の構成(コースの出力内容をもとに作成)

コード変換の段階では、API の置き換えや依存関係の更新に加えて、ビルドの検証まで含まれます。変換の過程で発生したビルドエラーの解消、テストの移行、アップグレード後の CVE スキャンと修正といった、移行を「動く状態」で終わらせるための工程が組み込まれています。コンテナ化や Infrastructure as Code の生成、CI/CD パイプラインの整備まで射程に入っており、解析から本番投入までを 1 つのワークフローとして扱えます。

なお、Copilot モダナイゼーションは通常の GitHub Copilot と同じ扱いでコードを処理し、セッションを超えてコード片を保持しません。カスタムスキルの内容も収集・送信・保存の対象外とされています。社内資産を扱う際の判断材料として押さえておくとよいでしょう。

学習環境の準備と始め方

リポジトリの前提条件は明確に定義されています。Windows 11(22H2 以降)、Visual Studio 2026、有効な GitHub Copilot サブスクリプション、レガシーアプリを動かすための .NET Framework 4.8 SDK、移行先となる .NET 10 SDK、そして Git が必要です。公式発表では Visual Studio 2022(17.10 以降)でも進められるとされていますが、リポジトリ側の記載は Visual Studio 2026 なので、環境を新しく用意できるならそちらに寄せた方が迷いは少なくなります。

知識面の前提としては、C# と ASP.NET、Git、NuGet の基礎が挙げられています。裏を返せば、移行の経験そのものは求められていません。開始手順はリポジトリをクローンするだけです。

git clone https://github.com/microsoft/dotnet-modernization-for-beginners.git
cd dotnet-modernization-for-beginners

あとは 00 の導入から順に読み進め、各章の指示に従って Copilot を動かしていきます。章ごとに完了状態が定義されているため、途中で自分がどこにいるのかを見失いにくい作りになっています。

実務へどう接続するか

このコースの価値は、ツールの操作を覚えることよりも、移行の進め方を型として持ち帰れる点にあります。評価で事実を集め、計画で判断し、実行で検証しながら進め、最後に運用へ渡すという流れは、対象がサンプルアプリでも実際の基幹システムでも変わりません。

一方で、サンプルと本番の間には差があります。実システムには社内独自のライブラリ、廃止された外部コンポーネント、テストが存在しない領域、そして仕様が文書化されていない業務ロジックが残っていることが普通です。エージェントが生成する計画はあくまで出発点であり、そこに現場の事情を織り込む工程は人間の仕事として残ります。事業を止めずに段階的に置き換えるという前提に立つなら、いきなり全体を変換するのではなく、境界を切って順番に移していく判断が要ります。

コースを一巡してから自社のコードで評価だけ走らせてみると、規模感と課題の種類が具体的に見えてきます。その結果をもとに、どこを内製で進め、どこを外部の支援に回すかを決める、という順序が現実的です。移行の全体像や段階移行の設計については、.NET Framework から .NET 10 への移行プレイブックもあわせて参考にしてください。

まとめ

.NET Modernization for Beginners は、レガシー .NET 資産の移行を「何から手をつけるか」の段階から支える無償のコースです。GitHub Copilot のモダナイゼーション機能が評価と計画を文書として吐き出し、人間がそれをレビューして進める形になっているため、AI に任せきりにせず判断の主導権を保ったまま学べます。まずは評価だけでも自社のコードで試し、移行の輪郭をつかむところから始めるのが有効です。

エンハンスド株式会社では、レガシー .NET 資産の評価から段階的な移行計画の策定、実装、Azure への移行と運用までを一貫して支援しています。自社での内製を前提とした伴走や、移行方針の妥当性を第三者の視点で確認したいといったご相談も承ります。レガシーシステム モダナイゼーションのページもあわせてご覧ください。

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